2016年9月20日初版第1刷発行 光文社
太田浩一訳 ¥920+税
モーパッサンが思っていたよりも読みやすいと気付いたため、早速挑戦してみました
モーパッサン傑作選
10編の短編・中篇が収められていますが、私の大本命は「脂肪の塊」
以前からそのタイトルに好奇心がうずうずしていたからです
「脂肪の塊」
フランス語ではBoule de suif
男性をそそる、コロコロと肉付きの良い体躯の高級娼婦につけられた愛称です
タイトルのインパクトからしてその娼婦が主人公なのだと思いきや、本当にスポットライトがあてられているのは周りの人びと
あまり筋を言ってしまうと読む楽しみがなくなるのが難しいところですが、舞台は普仏戦争に敗れプロイセンの占領下にあるフランス
たまたまその娼婦と同じ馬車に乗り合わせたお高く品良く振舞うブルジョワジーの紳士淑女、それに聖職者までもが利己的で浅ましい姿を持ち合わせているさまを、作者は非常に鮮やかに浮かび上がらせます
読みながら、彼らへの苛立ちと共に自分にも同じ要素があることに気付き、二重の嫌悪感
どの時代にあってもどの国にいても、人間の醜さというのはそう変わらないもの
だからこそ、この作品は今後も読み継がれてゆくべき物語だと思います
最近、読んだ本や旅行について英語で語り合う小グループにみそっかすで参加させてもらい始めたのですが、この本は読んだ人が多く、私の苛立ちを共感してくれる人が多くて嬉しかったな
日本文学はもちろんですが、広く知られている外国の作品も読んで異文化で育った人たちと意見を交換してゆけたら楽しいなと思う今日この頃です